IEEE(米国電気電子学会)で進められてきた電力線通信(PLC)の世界標準化に向けた作業が、佳境を迎えている。「HD-PLC」の技術をベースライン技術としたPLC標準規格のドラフト(草案)がまとまったのが2009年7月のこと。その後、業界各社の意見を反映させた新版(ドラフト2.0)が2009年12月に承認され、一般への公開も始まった。世界標準としての正式決定は2010年末になると見られるが、既にメーカーは公開されたドラフトをもとに世界標準対応のPLC機器を開発できる環境にあり、市場は急拡大の気配を見せ始めている。
| 2008年12月 | HD-PLCの基本技術と他方式との共存技術が、標準規格のベースライン技術として承認 |
|---|---|
| 2009年7月 | ベースラインをもとにまとめた仕様のドラフト(草案)がまとまる |
| 同年後半 | ドラフトに対する各社の意見(約3000件)に対応 |
| 同年12月 | 意見を反映させたドラフトの新版(2.0)がまとまり、一般公開 |
| 2010年2月 | IEEEの委員会でドラフト2.01を承認 |
| 同年春(予定) | IEEEの上部委員会による承認投票 |
| 同年末(見込み) | 世界標準規格として正式承認 |
•「HD-PLC」を基本技術としたPLC世界標準規格策定までの経緯と今後の予定
異例のスピード審議
IEEEが策定したPLCの世界標準規格は、「HD-PLC」で採用されている物理層とその上位のMAC層の仕様がすべて含まれており、「HD-PLC」との通信互換性が可能である。さらに、異なる方式のPLC機器同士が干渉し合うことによる通信障害を防ぐ共存仕様(関連記事)も含まれている。これまで複数の規格のPLC機器が同じネットワークに混在していると、通信ができなくなるという課題があったが、世界標準規格では異なる規格のPLC機器の共存を可能にした。これによりユーザーは機器(規格)の違いにとらわれず、ネットワークを安心して利用できるようになるわけだ。
標準化作業を担当する委員会が2009年7月に提示した最初のドラフトに対し、業界各社から寄せられた意見は約3000件。その数もさることながら、通常なら2年はかかるとされる意見への対応を、業界各社の協力でわずか半年で処理したことから、早期の標準化を望んでいた各社の期待の大きさが伺える。
この2009年末に一般にも公開されたドラフトは、今後、IEEE P1901作業部会の上位組織に当たるスポンサー委員による投票を経て正式に世界標準規格となる手順だが、最終的な標準仕様はドラフト2.01とほぼ同じ内容になるとみられている。そのためドラフトをもとにした世界標準対応PLC機器の開発は事実上スタートしており、2010年末と見込まれている正式な世界標準規格発行後、一気に対応機器が市場に登場してくることが予想される。
「HD-PLC」で実現する環境革新の可能性
今回の標準化作業の中で多くの支持を得た理由のひとつは「HD-PLC」の環境革新の可能性があげられる。「HD-PLC」は地球環境への負荷を抑えながら、どこからでもネットワークにつながる世界を実現する「グリーンユビキタス」のコンセプトを標榜している。いまや環境への配慮は社会からの要請であり、どの業界、どの企業でも地球規模で環境に配慮しながら価値創造を向上することが課題となっている。「HD-PLC」技術は、さまざまな分野で環境革新を実現する大きな可能性を秘めていることも、大きな支持が集まった理由と言えるだろう。
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